街中のフェードイン/フェードアウト

日暮れ頃の新宿駅南口前の通りはストリートミュージシャンが集まるようになっていて、南口から東南口までの間に多いときで5組ぐらいのミュージシャンがいることもある。この通りを歩いていると、天然のフェードイン/フェードアウトが聴けてなかなか楽しい。

ストリートミュージシャンというと、一般的にフォークギターの弾き語りというイメージがあるけれど、むしろそういう人はあまり見かけない。キーボード弾き語りの人、カラオケに合わせて歌う人、バンド編成の人たちなどが多い。バンド編成の場合、ドラムの役割はカホンが担っている。小ぶりのシンバルなども用意されていて機材はなかなかの充実ぶりである。

昨今は、どのような演奏形態をとっていてもマイクとアンプが必須アイテムであるようだ。あるときビートの利いたトラックを流しながらフリつきで歌う二人組が衆目を集めていた。その横にフォークギターを抱えた男性が立っていて、二人をうらめしそうに見つめていたのが記憶に残っている。

東南口の階段を降りて、フラッグス脇のスタバなどが並ぶ通りを歩いていると、ケバブ屋からスパイスの香りが漂ってくる。腹が減っているときなどは、食道がパカっと開き、鼻から胃にかけて一直線に香りが流れこんできて、堪らない気持ちになる。胃の中のひな鳥たちが餌を求めてピーチクパーチク騒ぎ出すのがわかる。

しかし一瞬にしてひな鳥たちは気絶してしまう。ケバブの膜を突き破って棘々しいケミカルな臭いが胃に雪崩れ込んでくるからだ。その臭いを放っているのはケバブ屋の先にあるLUSHである。ケバブにかぶりついて咀嚼すると、LUSHの入浴剤が口中に拡がり、見る見るうちに泡だらけという場面を想像してしまい、思わずえづいてしまう。きっと胃の中のひな鳥たちも泡を食っていることだよ。

件のケバブ屋はもう何日もシャッターが降りたままなので、ひょっとすると店じまいしたのかもしれない。LUSHの近くでテイクアウトオンリーの飲食店を続けるのは難しいことだと思う。ケバブのような香りの強い食べ物なら尚更である。あそこは香りのフェードイン/フェードアウトが味わえる希有な場所だったから残念といえば残念だ。

ところで、香りのフェードイン/フェードアウトで思いついたのだが、DJ、VJに続いてPJなんてのはどうだろう。PJとはパフューム・ジョッキーの略である。なんだか芸能人と結婚できそうな雰囲気が漂う肩書なので、誰かやったらいいと思う。オススメ。

 

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