我がお師匠さん

極希ではあるけれど、おまえのギターは何を手本にしているのかと尋ねられることがある。これは聞かれて嬉しい質問であると同時に答えに窮する質問でもある。回答に窮する理由について述べようと思ったが底なし沼に嵌っていきそうだったので思い切って省略する。それでもやはり容易に答えられる質問でもない。今後いつ訊かれてもいいようにある程度の筋道は立てておきたい。

と、思ったがやはり面倒なことは一切捨て置いて、ここは勢いだけで好きなギタリストを挙げていこう。

ウィルコ・ジョンソン Wilko Johnson

右の手首の力を抜いた状態でピックアップに対しやや垂直気味に人差し指中指薬指の爪を弦にぶつける。6弦を弾く場合はテンションが高いブリッジ寄りをコンコンと叩く。こう弾くと小気味の良い締まった音になる。

「君、指で弾くんだね?ピックアップにもピークというものがあって下手くそが力んで弾けばやはり音は汚くなる。指で弾けばいい塩梅の音量になるからピックで弾くよりも良い音がするんだよ。」学生時代、ドクター・フィールグッドのコピーバンドをやった際にある先輩より言われたことだ。そういうもんなんでしょうか。

ウィルコ・ジョンソンのブラッシングの音はシュコシュコシュコシュコと聴こえるから、聴いていて悩ましいに気持ちになる。

右手のタイミングには揺れがある。“She Does It Right”のリズム・パターンはセカンドラインに近く、少しばかりシャッフル気味に弾いているような気がする。ブリッジ側からネック側へ行ったり来たりしながらストロークするためか。

女の子が生まれたら「ウィル子」と名づけたいと思っている。男の子だったら「ブリ郎」。

デヴィッド・T・ウォーカー David T. Walker

世の中にはエレガントなエロがあることを教えてくれた。 ニック・デカロ『イタリアン・グラフィティ』収録の”Under The Jamaican Moon”の前奏、間奏及び後奏における手練の技。大人の余裕を見せていたかと思えば急に少年のような茶目っ気も見せるから 尚恐ろしい。初めて聴いたその日から今日に至るまで抜かれた骨の数夥し。

エイモス・ギャレット Amos Garret

不可解なのはボビー・チャールズのアルバムにおけるその抑えに抑えた激渋の演奏だ。ロビー・ロバートソン抜きのザ・バンドにエイモス・ギャレットという堪らない顔ぶれによる演奏も渋すぎやしないかと感じてしまう。そう思ってしまうのはおそらく私が素人だからだろう。想像するにきっとボビー・チャールズも含め彼らは檜風呂のようなグルーヴを生み出そうとしたのだろう。なんてかっこ良い人たちなんだろうか。

それはさておきエイモスさんのこと。エイモスさんの得意技に1音半チョークダウンというものがある。これをやられたら三半規管がイカれるのでたちまち酔ってしまう。きっと弾いている本人も酔っている。すっかり千鳥足なのだが、それはもう見事なステップの千鳥足だ。なぜそのタイミングで!という常人には理解しがたいタイミングでステップを踏んでいたかと思えば、体が段々と宙に浮き始めて昇天。エイモスさんはそういうギターを弾く。

来日公演を渋谷のクワトロまで観に行った。ステージに現れるとまず譜面台に置いてあった袋よりバンジョー用のピックを取り出し指に嵌めようとするのだが、手が震えてなかなか嵌められず、見ていておいおい大丈夫かよと思った。しかし弾き始めたら絶好調も絶好調。この日以上に音楽を聴いて心地よくなったことはない。しかるにライブの細かい所は一切覚えていない。終演後Tシャツを買ってサインしてもらった。間近で見るエイモスさんは恐ろしくチビリそうになった。

 

ロバート・クワイン Robert Quinn

マシュー・スイートとリチャード・ヘル、どちらも最高。久しぶりに聴いたらいかに自分がギターを弾けていないかということを痛感させられてヘコんだ。

ダニー・コーチマー Danny Kortchmar

オブリガートというものがこの世に存在することを教えてくれた。それは、世の中には良い曲というものがあって、同時に良い歌と良い演奏があるということを教えてくれたということでもある。この人の存在が裏方に目が向かせるキッカケにもなった。

ダニー・コーチマーに私淑していたと言っていいだろう。ギターというものは気持ちよく弾くものであるということ。粋な音、野暮な音があること。野暮な音は決して出さないこと。たまにはあえて外すことも忘れずに。そういったことを学んだ。

久々にJo Mamaを聴いていてダニー・コーチマーのような姿勢で音楽に接したいと改めて思った。それが自分にとって理想的なことのようにも思う。

鈴木茂

一時期どうしたら鈴木茂になれるかと思ってギターを弾いていた。「夏なんです」や「外はいい天気」のもわんとしたフレーズが心地よくて好き。

 

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