俺の小さな友達に挨拶しな!

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先日、軽い洒落のつもりで、Twitterのアカウントをブライアン・デ・パルマ監督の名作「スカーフェイス」でアル・パチーノが演じた主人公のトニー・モンタナ(Tony Montana)をもじって”Tory Montana”とした上で、ヘッダーやアイコンをしかるべき画像に変更し、自己紹介の欄におなじみの名台詞”Say hello to my little friend!”と書き込んだところ、みるみるうちにリムーブされ、フォロワー数が激減。数がモノを言うコンペティティブなSNSという場で、致命的な戦略ミスを犯してしまった。こういうことが起こるといつも決まって「やっぱりな」とつぶやくのだ。今まで調子に乗って一度でも良いことがあったか。

学生時代に所属していた軽音サークルの定例ライブでの出来事を思い出す。それは、スタジオの一室を借りて行われたライブで、VoidだったかMinor Threatだったか忘れてしまったが、我々のバンドがハードコアのコピーバンドをやったときのことだ。サークル員がモッシュの真似事を始めたので、我々もそれを煽るように暴れながら演奏した。無論、私も飛び跳ねてボーカル担当の先輩に体当たりなどしていたのだが、その最中に勢い余ってシールドに引っ張られるかたちでマーシャルのヘッドが地面に落ちてしまったのだ。そのときの友人の血の気の引いた顔といったらない。

ヘッドを戻して恐る恐るスイッチを入れてみると、元どおり音が出たので安心はしたものの、すっかり意気消沈してしまった私は大人しく残りの演目をこなしたのであった。終わってから近くにいた先輩をつかまえて「俺が調子に乗ると決まってこういうことがあるんですよ」と卑屈なことを呟いたら、先輩は「アハハハ」と笑っていた。

ところで、先日、電車に乗ってたときに印象深い出来事があった。

それは金曜の午後10時頃のことだった。電車に乗り込むと対面の扉にもたれかかりながら大きな声で通話している人物がいた。クールビズ姿の20代中頃と思われる男性で、子供が尿意を我慢しているときのように体をクネクネさせており、酔っ払っているように思えた。

次の駅で電車が止まると、私と同じ駅で乗り込んだサッカー選手のネイマールにどことなく似たところのある相貌の男性に「おい、しゃべるんなら外でしゃべろよ」と注意を受けたのだが、それを無視して話し続けるので、注意した男性は、通話を続ける男性の肘を軽く叩いて同じ言葉を繰り返した。車内の視線が一斉に二人に注がれた。

バツの悪い思いをした男性はそそくさと電車を後にするだろうと予想したのだが、彼は電車からは降りずに、一旦電話を切ると、発車と同時に注意した男性に絡み始めた。「なんなの。ちょっと意味わかんないわ」などと言いながら、クネクネした動きで顔を近づける。注意した男性もその反応に驚いていたようでキョトンとしながらも、車内での通話は迷惑であるということを改めて男性に伝えた。それを受けたクールビズ姿の男性の主張を補足しながらまとめると以下のようになる。

車内通話の何が迷惑なんだ。例えば二人連れの者などは電車内でも話すが、それと車内での通話は何が違うのだ。どちらも同じ話し声だろう。なぜ一方的に車内通話だけ弾劾されなければならないのか。注意した以上それを説明する義務があるはずだ。さあ、納得できるように答えろ。それができないのなら、私に注意したことを撤回するのが吉である。

もちろんこの通りに言っていたわけではないが、おそらく上記のようなことが言いたかったのだと考えられる。「うわあ、インターネットみたいなこと言うなあ」と思った私は完全にROM専と化していた。

座席に座りながら二人の様子を伺っていたストリート系ファッションに身を包んだ男性がイヤホンを外してカバンにしまうと立ち上がり、注意した男性に近づいていき「大丈夫ですか?」と声をかけた。

新たに現れた男性は通話していた男性に対して「さっきからずっと話してましたよね?言われなきゃずっと話してましたよね?」と尋ねた。「そうですよ。それの何がいけないんですか?」と返ってくるので、さらに「何で今怒られてるのかわかんないの?」と尋ねる。「わかんないすね」という返事に、ストリート系ファッションの男性はあきれ果てた様子で「あなたいくつよ?」と聞いた。良い年してそんなこともわからないのかというのである。クールビズの男性はさきほどのような勢いは失いつつも、車内通話も二人連れの話し声も同じ話し声なのだから、車内通話だけ注意を受けるのはおかしいというおなじみのロジックを展開したのだが、ストリート系ファッションの男性は迷惑なもんは迷惑なんだよとピシャリ。怒られていた男性が、事態を収拾することを優先するかのように「たしかに会話の一方しか聞こえないと不快に感じるって話もありますよね」ということを穏やかな表情で言うので「やっぱり確信犯じゃん!」と思ってしまった。

ストリート系ファッションの男性は、最初に注意した男性に対しての無礼を謝罪するように促し、怒られていた男性は笑顔ですいませんでしたと言いながら3度ほど頭を下げていた。ストリート系ファッションの男性は二人に背を向けて停車を待った。ドアが開いてストリート系の男性がホームに降りると、やや間をおいてクールビズの男性も電車から去っていった。注意した男性が残る車内は人の話し声がいつもより際立って聞こえるように感じられた。

車内に残った男性は、さらに二駅先で停車した際に、いかにも働き盛りといった風情のパリッとしたクールビズ姿の男性から、「よくぞ言ってくれた」という賛辞を受け握手を求められていた。働き盛りの男性はよほど感慨深かったようで、改めて握手を求めると電車を降りていった。働き盛りの男性に続いて私も電車を降りた。

今ここで我々が考えなくてはいけないことは、マナーとは一体何なのかということであるが、それはどこかの高名な元教授などがブログで良い感じの答えを用意してくれそうなので、それに期待したいと思う。

 

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