指の骨にヒビが入ってすごく痛かった

今年の初めに右手中指の骨にヒビが入った。それは1月11日に行われた、リハーサルスタジオの入ったビルを丸々使ったオールナイトのイベント『みんなの戦艦』に出演した日に起こった。

その夜、自分の出番が終わって、バースペースのような所でお酒を飲んでいた。小便がしたくなり、トイレがあるフロアに行こうと階段を降りているときに、前方に吉田君の姿が見えたので、ふざけてバタバタと音を立てながら追いつこうとした。途中で知らない人が二人の間に入ったためその企ては失敗した。その人も同じフロアに入るところだったから、それに続いてドアを潜ろうとすると、その人はこちらの存在に気づいていなかったのか勢いよくドアを閉めてしまった。そのときたまたま運悪くドアの枠に手をかけていたため指を挟まれてしまった。そのドアが防火扉でしかも勢いまでついているときた。それを受け止めたのが右手中指と薬指の先端であった日にはどうする。

とりあえず本来の目的であるところの小便をして落ち着こうと思った。手を洗う段になって初めて自分の指をまじまじと見た。すでに内出血を起こしており爪の内側には血が溜まっていてひどい有様であった。

元いたスペースに戻りドリンク係の人に事情をいってレジ袋に氷をいれてもらい、患部を冷やした。周りにいる知人をつかまえては今しがた起きたことを説明し、指の痛みを訴えて心配してもらった。

時間の経過とともに痛みはひどくなり、気分も憂鬱になっていった。

直近に起きた様々な出来事の記憶がドアが閉まる瞬間その一極に直線を描いて向かっていくような感覚に陥った。その中でも一番因縁めいて思えたのが広島での自分の行動であった。

その日の前の週、広島でライブがあり、その翌日にうみのてさんらと宮島観光をした。厳島神社の大鳥居を背に記念撮影をする段になって、観光気分で浮かれていたためにふざけて両手中指を立てるというポーズをとった。我が身に起こった災いはこの無礼に対して罰が当たったのだと思えてならない。反対の立場になって考えてみればよくわかる。どこぞの馬の骨が西洋式の不躾なポーズで写真を取られているではないか。礼儀というものを知らんのか。この馬鹿いわしたろか。てなもんだろう。本当にくだらないことをしたものだと恥じ入るばかりだった。

その日は始発で帰りすぐ床についたもののなかなか寝付けず、寝ても痛みですぐに目が覚めてしまう。指は内出血で今にもはち切れんばかりだ。そこで日曜でも開いている近所の病院を調べて早いとこ向かうことにした。

診察を受けるとレントゲン撮影の結果から中指の骨にヒビが入っていることがわかった。

爪に穴を開けて溜まった血を抜きましょうということになった。その様子は見ないようにしたのでどんな器具を使ってどのように行われていたのかわからないが、痛くはなかった。爪はそのうち生え変わるということであった。U字の金属プレートで保護をしてもらいその日の診察は終わった。

問題はその数日後にライブを控えているということであった。しかし、これが恙無く終了した。メンバー及び関係者各位には心配をかけた。

その後、痛みがひいてからはといえば包帯で右手が使いにくいということも非日常として楽しむことができた。入浴する際に右手にレジ袋をかぶせて、左手だけで頭を洗ったりするのはなかなか愉快だった。

5ヶ月が過ぎピータン色をしていた爪も剥がれ今では新しい爪がすくすく育っていて他の爪に追いつこうとしている。

しかし不思議に思うのは痛みの記憶は残らないということだ。痛かったという事実は残るものの、どれだけ痛かったかということは感覚として思い出すことができない。むしろ鎖骨を骨折するところなどを想像したときのほうが感覚的に痛い。ゆえにこれから痛いことをするぞという脅迫は最低だ。人の道に外れた行為だ。決し許してはいけない。

 

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